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2025.10.03
株式会社PENGUIN WORKS 菅原優斗さんインタビュー
株式会社PENGUIN WORKS
菅原優斗さんインタビュー
【インキュベートルーム入居者インタビュー】

話し手:菅原さん
【プロフィール】
菅原 優斗 (株式会社PENGUIN WORKS 代表取締役)

聞き手:アサカワミト
<インタビュアー>
アサカワ ミト(コミュニティマネージャー)
ひらっくコミュニティマネージャー。受付業務をしながら、施設の紹介、シェアオフィス会員などを始めとした利用者さまへのインタビューなど、つながる場と機会を作っている。ランチ会をはじめとした、交流イベントの企画、司会進行なども担当。
インキュベートルームの入居者さまにインタビュー
枚方市立地域活性化支援センター「ひらっく」は、新たな事業の創出に加え、地域産業の振興を図るため、起業相談や売上アップ、資金繰りなど経営に関するさまざまな相談にお応えしています。
さらに、多くの方の知見を活用できるコミュニティ型の創業支援施設として、創業支援のワンストップ相談窓口となり、専門家による経営相談、人材及び組織の育成支援等を行うとともに、利用者同士が交流でき、ビジネス面での相乗効果が期待できる機会を創出しています。またセミナー・講演会の開催や会議室、セミナールームの貸し出しも行っています。
今回は6階にあるインキュベートルームの入居者さまにインタビューをします。
インキュベートルームとは、企業や起業家を支援・育成するために、負担の少ない使用料で貸し出しているオフィスのこと。専任のスタッフが豊富な経験に基づいてビジネスモデルや企業経営のアドバイスを行い、独り立ちを支援しています。オフィスは1年から最長3年まで使用可能です。
そんな6階インキュベートルームの入居者さまから、今回は株式会社PENGUIN WORKS 菅原優斗さんにお話をお伺いしました。
お客様と伴走する、デザイン全般を扱う会社
ミト: 今日はよろしくお願いします。ではさっそくですが、まず簡単に自己紹介をお願いします。
菅原さん: 株式会社PENGUIN WORKSの代表をしております、菅原と申します。ひらっくのインキュベートルームに入居してから8〜9ヶ月ほど経ちます。
ミト: 株式会社PENGUIN WORKSさんは、どういった会社でしょうか。
菅原さん: ひと言で言うと「お客様と伴走するデザイン会社」です。
ミト: 主にWebページの制作でしょうか?
菅原さん: はい、Web関係のお仕事が全体の7〜8割を占めています。最近はそれ以外の分野も関わることがあり、紙媒体、いわゆるグラフィックデザインだったり、ロゴの作成だったりと、デザイン業全般を幅広く行っています。
あと件数は少ないですが、Webシステムの開発も行っています。実は、今私自身がメインで動いているのもその分野なんです。
ミト: システム開発について、もう少し具体的に教えていただけますか。
菅原さん: ホームページであれば、表示されればOKなんですけど、例えば会員登録などの「ユーザーが何かアクションを起こした時」に、情報がきちんと登録されるようにするなど、そういった「目に見えない部分の機能」を開発することが、システム開発の仕事です。最近はここにも力を入れて取り組んでいるところです。
ワークライフバランスを考えて独立
ミト: 現在の会社を始められたきっかけは何だったのでしょうか。
菅原さん: 前職はIT系の商社で制作部門に在籍していたんですが、その時にお客様から「ホームページを作れないか」「名刺をお願いできないか」という声をよく聞いていたんです。
ミト: それで、いずれ独立しようと思われていたんですか?
菅原さん: 自分で事業を始めたきっかけは、正直マイナスな気持ちからでした。
会社で働いている中で、自分のライフイベントやライフステージ、ワークライフバランスを考えてみた時に「これを続けていくのは無理だな」と思ったんです。それなら、一度は自分の力でやってみよう。そう思って独立したのがきっかけでした。
会社を辞めて独立したのがちょうど4年くらい前で、最初は個人事業からのスタートでしたが、現在は法人化しました。
ミト: では今はチームで活動されているんでしょうか?
菅原さん: そうですね。私一人とアルバイトの方で2名で、他にも各分野に気軽に相談できる協業者がいます。デザインであれば「デザインの専門家」として頼れる人がいたり、写真や動画についても外注として手伝っていただいています。
実はイチからではなく、リニューアルの依頼が多い
ミト: 普段はどういったお客様からの依頼が多いですか。
菅原さん: 業種はさまざまですが、やはり関西圏の中小企業様が比較的多い印象です。依頼の経路は本当にいろいろです。
ご紹介も多いですし、以前担当したお客様からのリピートだったり、お客様のお客様からお話をいただいたりだとか。そういう「紹介の紹介」というケースも多いですね。ほかには、交流会などのラフな場で知り合った方からお仕事につながることもあります。
ミト: それだけデザインの需要があるということですね。
菅原さん: そうですね。ロゴや名刺、会社のパンフレット、ホームページなど、業種に関係なくビジネスを行う上で最低限必要なセットになりますので、やはり需要はあると思います。
でも新規で作りたいというよりも「今あるものが古くなった」「作ってもらったけどデザインが……」などの課題を持っている事業者さんが、実は多いんです。
ミト: ゼロからではなく、リニューアルの依頼が多いんですか。
菅原さん: そうです。むしろリニューアルの方が多くて、新規で一から作りたいという依頼は、実はそこまでないんです。
例えば直近では、創業40〜50年ほどの会社のパンフレットを作り直したんですが、それまでは同じパンフレットを10年くらい使い続けていたんです。
そうなるともちろん内容も古くなりますし、他社と比べても少し時代遅れに感じられます。そこを、リニューアルという形でご依頼いただきました。
「やるからにはマジでやる」
ミト: では、他社との違いや強み・こだわりについて教えてください。
菅原さん: 強みとしては「ワンストップで対応できる」という点ですね。そしてデザインに関してはかなり幅広くさせていただいています。Web制作、グラフィックデザイン、さらに写真撮影や、動画制作も可能です。
ミト: 動画制作もですか!本当に幅広いですね。 こだわりについてはいかがでしょうか。
菅原さん: こだわりは「やるからには本気(マジ)でやる」という姿勢です。
デザイン業において利益だけを追求しようとすると、どうしても「いかに短時間で仕上げるか」という方向に収束してしまうと思うんです。
例えば本の表紙デザインを依頼された時に「10万円で作ります」と見積もりを出したとします。そうなると、5時間で仕上げるより2時間で仕上げた方が時間単価は高くなるので、利益だけを追求すればそういう方向に行きがちなんです。
でもそれは、お客様の立場を考えた時に「ちょっと違うよね」と私は思うんです。もちろん会社として利益を出すことは必要です。ただ、時には利益を度外視してでも、お客様の理想に伴走してこだわり抜いて仕上げる。それも必要だと思っています。
なので「やるからには本気(マジ)でやる」という理念を大切にしています。
ミト: お客様側からしてもちゃんと向き合ってくれるほうがありがたいですよね。
案件を多く抱えすぎないようにした
ミト: これまでのお仕事の中で最大のチャレンジ、あるいは困難だったことはありますか?
菅原さん: 多くの方がそうだと思うんですが、開業当初は思うように仕事が取れなかったことですね。今では声をかけてもらえるようになりましたが、開業して半年くらいは本当に苦しかったです。
ミト: 先ほど、前職で「やってほしい」という声から“需要がある”と実感されたと思うのですが、実際に独立してみると、そこは違ったんですか?
菅原さん: 違いましたね。前職は商社という業種で、事業年数も60年ほど経っていたので、すでにお客様との信頼関係があって依頼も安定していて、仕事が途切れることはありませんでしたが、独立した際は違いました。
なので最初は有料の案件紹介サービスを使ったんですが、そうすると最低でも3社、多いと10社くらいと相見積もり、つまり価格を比べられてしまうんです。安くすれば仕事は取れますが、利益は残らない。やればやるほどお金が減っていくという、よく分からない状態になっていました。忙しいけれど余裕がなく、時間もお金も足りない。そんな状況が開業1年目くらいまではずっと続いて、本当にしんどかったですね。
ミト: そこからどうやって脱却されたんですか?
菅原さん: 未だに完全に脱却できてはいないんですけど、自分の中で大きかったのは「断る勇気を持つ」ということでした。具体的にはあらかじめ「撤退ライン」を設けておくことですね。
当初は必死だったので「限界まで対応しよう」としてしまってました。ホームページ制作ってほぼ人件費ですから、自分の人件費を削ればいくらでも安くできてしまうんです。でもそれを続けるとサービスとして成り立たない。だから最初から条件を明確にして「この金額までは対応するけど、それ以上を求められたら撤退する」と線を引くようにしました。
ミト: 時には断る勇気……大事ですよね。
菅原さん: はい。以前は見積もりを出すたびに「この金額なら絶対に受注できる!」と強く期待して、それが見送りになるとガッカリするということの繰り返し。かなりメンタルを消耗しました。
でも今は「受けられたらラッキー」くらいの気持ちで軽く構えるようになりました。そうすることで精神的にも安定しました。
ミト: お仕事も取れるようになってきましたか?
菅原さん: そうですね。以前は「常に5件〜10件並行して進めないと不安」という状態でしたが、今は自分が考える正規の単価で見積もりを出して「3件出して1件決まれば十分」と考えるようになりました。
受注率は下がりますが、その分1社に対してより多くの時間を割けるので、制作物のクオリティも上がります。結果的に、複数を無理に並行するよりも余裕が生まれ、時間的にも精神的にも安定しました。
それに、こうして自分の基準を守っていると、自然と求められるお客さんの層も変わってきました。資本規模の大きい企業からも依頼が少しずつ増えました。小さな変化を積み重ねて、大きな変化に繋がったと思っています。
「会社勤めのスタイル」という、メリハリのつく働き方
ミト: 仕事のバランスを保つために工夫されていることがあれば教えてください。
菅原さん: 「外にオフィスを借りること」ですかね。
以前は自宅メインで、たまにコワーキングスペースを利用していたのですが、「行くのが面倒だな…」となって、結局は自宅8割・コワーキングスペース2割くらいのバランスでした。時にはコワーキングスペースに行ってもNetflixを見て帰るだけ、なんて日もあったくらいで。
ミト: 今はバランスを取れるようになりましたか?
菅原さん: はい。本当に最近なんですけど(笑) ひらっくでオフィスを借りてからは、家庭と仕事のバランスにメリハリをつけられるようになってきたと思います。外にオフィスを借りれば「せっかく借りてるんだからもったいない」という気持ちも働きますし、「ひらっく」だと他の入居者さんとの交流から刺激も受けられます。
仕事道具もほとんどオフィスに置いているので、行かないと携帯もパソコンもなくて仕事ができない。だから「行かざるを得ない」環境にしました。
そうするうちに自然にオンとオフがはっきりしてきましたね。オフィスで働き、自宅では極力仕事を持ち込まないようにする。この切り替えができるようになりました。
結果的に、一周回って「会社勤めのスタイル」がバランスを保つ秘訣なんだな、という結論に至っています。
ミト: 「会社勤めのスタイル」ですか、なるほど。
菅原さん: コワーキングスペースだと仕事道具を置いて帰れないですし、自宅だと本当に家から出なくなるんですよ。「起きて3分後には仕事開始」ということができて「無限に仕事できる状態」になれちゃう。それが逆に自分を苦しめていたんだなと、今は思いますね。
働いていても孤独を感じない。「ひらっく」のちょうどいい距離感
ミト: ここからは「ひらっく」についてお聞きしたいと思います。インキュベートルームに入られたきっかけは何だったのでしょうか?
菅原さん: 元々は、5階のコワーキングスペースを利用していたんです。そこでひらっくスタッフの高崎さんから、ちょうど6階にあるインキュベートルームが空くという話を聞きました。
「審査はありますけど、よかったら挑戦してみませんか?」とすごく丁寧にリードしていただいて。ちょうどオフィスを探していたので「入れるなら有難いな」という気持ちで応募しました。ですので選んだというより、本当にたまたま知ったんです。
ミト: では、もともとインキュベートルームのことはご存知なかった?
菅原さん: はい。知らなかったです。
ミト: インキュベートルームを借りられてから、何か変化はありましたか?
菅原さん: ここに来れば必ず誰かしらに会えるところですね。たとえばトイレに行ったときにすれ違うとか、そんな些細なことから雑談が生まれたり、雑談ベースで「今こんなことで悩んでる」とか「こういうこと、よくあるよね」と話せるので、そういう場に居られるということはとても良かったと思います。
仕事じゃないけれど、ちょっと人に話したいことってあるじゃないですか。「最近これ買ったんですよ」とか。そういう話を家族以外で出来るって、すごくいいなと思います。
その結果、自営業なら多くが抱える孤独感を感じません。仕事以上、でも友達未満といった中間的な関係性がここで生まれていて、それがすごく心地よいです。
ミト: 話せる相手がいるというのは大きいですね。
菅原さん: 本当に。自営業している人は交流会などに行って、わざわざ会いに行くことをしていますが、そこから人脈や関係性ってなかなか簡単には広がらないですからね。
でもここは、大人のサークルみたいな雰囲気があって、それが個人的にはすごく居心地がいい。気軽に話せるし、安心できるんです。
ミト: 具体的に他のインキュベートルームの方々とはどんな交流をされていますか?
菅原さん: 雑談だけでなく、一緒に仕事をすることもあります。ひらっくに事業相談に来られた松宮さんが開業をされる時には、インキュベートルームのみんなで協力して、役割を分担して取り組んだこともありました。
あとはお茶会もしています!
ミト: お茶会ですか?
菅原さん: はい。交流の一環として、インキュベートルームのメンバーで月に一度、みんなで集まっていて、ちょうどいい息抜きになっています。
今後の目標は「最強のメンバー」作り
ミト: ありがとうございます。では、今後やりたいことや、ご自身のキャリアやビジネスで達成したい目標はありますか?
中期的には、自分の会社をまず3〜5名体制にして、リスペクトと信頼のおける「最強のメンバー」で組織を固めたいと思っています。自分の中での最強メンバーを集めてチームを作る、というのが中期的な目標です。
長期的には、社会的な意義のある事業に取り組みたいと思っています。まだ具体的に何になるかわからないのですが、例えば教育の分野に興味があります。今までの知識や経験を活かして、新しい領域に挑戦できたらと考えています。
あと、これは少し仕事からは離れますが、趣味でゴルフにハマっていまして。それをきっかけに仲良くなったり、自分の交流の場が広がったりすることが実際何度かありました。そういう経験から、PENGUIN WORKS主催の経営者コンペができたら面白いなと思っています。
ミト: ありがとうございます。では、これから新しく「ひらっく」を使い始める人へ何かアドバイスをお願いします。
菅原さん: まずは「ここへ来る」ということを習慣化して欲しいなと思います。
「一般的なシェアオフィスは個室になっているため、良くも悪くも閉鎖的な空間になってしまいます。しかしインキュベートルームでは、そうならないようにメンバー間でも働きかけているので、いい出会いや自分のビジネスにプラスになるようなことが、思いがけないところで生まれたりします。
もしインキュベートの募集を見かけて、「応募してみようかな」と少しでも思われるなら、ぜひ応募して欲しいと思います。
菅原さんオススメの本
ミト: これは毎回インタビューでお聞きしているんですが、影響を受けた、もしくは最近読んで面白かった本を教えてください。
菅原さん: 私のオススメの本は『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる 究極のルール 』という本です。
ミト: 装丁が鮮やかですね。結構ビジネス書は読まれるんですか?
菅原さん: 読むペースに波はありますけど、最低でも月1冊は読むように決めています。それこそT-SITEの蔦屋書店に行ったら、一度に5冊ぐらいまとめ買いすることもあります。
ミト: では、その本について教えてください。
菅原さん: タイトルの通り「資産を残さずゼロで死のう」という考え方を提唱している本なんですが、読んで衝撃を受けました。
日本では「老後資金2000万円問題」という言葉が記憶に新しいと思います。だから若いうちから貯金や資産形成しようと言われますよね。しかし、この本の著者は「老後にそこまでお金はいらない」と断言しているんです。若い時は過度に貯金はせずに「体験にお金を使え」と言っています。
実は、多くの人が老後にお金を大して使わず、守りに入ったまま亡くなるんだそうです。だったら若いうちにやりたいことをやって、思い出を増やしておく方が幸せだよ、とも言っています。
私自身もこれを読んで「70歳になってから世界一周するより、今1億円あるとすれば、すぐ行く」と思うようになりました。旅行でも趣味でも、それがのちの人生を豊かにする「本当の資産」になるのだと気付かされました。
そのためには日々の小さな消費──たとえば「毎日スタバに行く」などの惰性でしていることを見直した方がいいとも書かれていました。
大事なのは「思考停止で生きずに、自分の幸福に直結する体験にお金を投じること」。
改めて自分のお金の使い方を考えさせられる一冊でした。
ミト: 「思考停止で生きない」。自分で事業をする人にとって、このマインドはとても大事ですよね。読んでみたいと思います。今日はどうも、ありがとうございました!
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働き方やワークライフバランスを少しずつ見直していき、ようやく自分の心地よいペースと環境を手にした菅原さん。
真剣に話をされているときの表情と、笑顔で話されている姿の両方が活き活きしているのが印象的でした。菅原さんの今後の活躍に期待ですね!
菅原さん、どうもありがとうございました!
▼株式会社PENGUIN WORKSについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
WEBページ https://penguin-works.co.jp/