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2025.12.10
トラマナ相談室(合同会社シナジー・エフェクト)野川 哲也さんインタビュー
トラマナ相談室
(合同会社シナジー・エフェクト)
野川 哲也さんインタビュー
【インキュベートルーム入居者インタビュー】

話し手:野川さん
【プロフィール】
野川 哲也さん (合同会社シナジー・エフェクト)
特に相談支援業務には15年近く尽力し、専門性を確立。

聞き手:アサカワミト
<インタビュアー>
アサカワ ミト(コミュニティマネージャー)
ひらっくコミュニティマネージャー。受付業務をしながら、施設の紹介、シェアオフィス会員などを始めとした利用者さまへのインタビューなど、つながる場と機会を作っている。ランチ会をはじめとした、交流イベントの企画、司会進行なども担当。
インキュベートルームの入居者さまにインタビュー

枚方市立地域活性化支援センター「ひらっく」は、新たな事業の創出に加え、地域産業の振興を図るため、起業相談や売上アップ、資金繰りなど経営に関するさまざまな相談にお応えしています。
さらに、多くの方の知見を活用できるコミュニティ型の創業支援施設として、創業支援のワンストップ相談窓口となり、専門家による経営相談、人材及び組織の育成支援等を行うとともに、利用者同士が交流でき、ビジネス面での相乗効果が期待できる機会を創出しています。またセミナー・講演会の開催や会議室、セミナールームの貸し出しも行っています。
今回は6階にあるインキュベートルームの入居者さまにインタビューをします。
インキュベートルームとは、企業や起業家を支援・育成するために、負担の少ない使用料で貸し出しているオフィスのこと。専任のスタッフが豊富な経験に基づいてビジネスモデルや企業経営のアドバイスを行い、独り立ちを支援しています。オフィスは1年から最長3年まで使用可能です。
そんな6階インキュベートルームの入居者さまから、今回は合同会社シナジー・エフェクトの野川哲也さんにお話をお伺いしました。

「トラマナ相談室」という変わった名前の事業所
ミト:今日はお忙しいところありがとうございます。ではまず初めに、お名前とご職業を教えてください。
野川さん:野川哲也(のがわ てつなり)と申します。「哲也」と書いて「てつなり」と読みます。
ミト: 珍しい読み方ですね。
野川さん:子供の頃は変な読み方だなと思ってたんですが、だんだんと「こんな読み方は僕しかおらへん」と思うようになり、今では気に入っています。
仕事は、障害者のケアプランを作成する「トラマナ相談室」という事業所を運営しております。
ミト:「トラマナ相談室」ですか。これもまた変わった名前の相談室ですね。
野川さん:トラマナって何?ってよく聞かれます(笑) これは僕が『ドラゴンクエスト』というRPGが好きで、その中の呪文にトラマナというのが出てくるんです。ドラクエでは操作キャラが毒の沼地を歩くとダメージを受けるんですが、このトラマナを唱えると、体がちょびっとだけ浮いてダメージを受けないんですね。
その名前から、「障害のある方に向けてちょっと体を浮かせて、前に進む力になれたら」という思いを込めて「トラマナ相談室」という名前にしました。
ミト: そうだったんですね。お仕事関係の専門用語かと思いました(笑)
野川さん:ああ(笑) でもこれ、語源を調べてみると「トラップを踏まない」から来てるという説があるんです。そう考えると“相談者がよくない方向に陥らないようにする”という意味では、自分の仕事とも大きく通じてるなと思いました。
ミト: 意味がしっかり繋がってますね。 ちなみに会社名の「合同会社シナジー・エフェクト」はどういう意味合いがあるんですか?
野川さん:会社名の方は「いろんな人と関わることでシナジー効果(=相乗効果)を得て、もっとみんなが元気になっていく」っていう意味でつけました。

「相談支援専門員」というお仕事

ミト:トラマナ相談室では「障害者のケアプランを作成する」とのことなんですが、そのお仕事について詳しく聞かせてください。
野川さん:障害者のケアプラン——正式には「サービス等利用計画」って言うんですけども、障害のある方や児童に向けて、生活全般から見て、どのような福祉サービス等を利用すれば、その人のニーズを満たすことができるか、その人の生活全体が豊かになるかを考える仕事ですね。
ミト: ホームページを拝見しますと、野川さんは「相談支援専門員」という肩書きをお持ちですね。
野川さん:はい。ケアマネージャーという、要介護者のケアプランを考える職業はよく耳にすると思うんですが、これは「介護支援専門員」と呼びます。それが我々障害の分野になると「相談支援専門員」となるんですね。
ミト: なるほど、障害の分野におけるケアマネージャーさんのようなお仕事なんですね。

野川さん:ただ、分野が違うだけで全く同じ業務をしているというわけではないんです。
基本、「40歳で介護保険に移るまでの赤ちゃんから大人までが範囲の対象」となってるっていうことと、福祉サービスのサポートだけじゃなく「ご本人がどう生きたいか、どのように社会参加してもらえるか」ということにも注目しています。そのためにはどういった社会資源を活用できるかというようなプランを考えています。
例えばコンビニの方が配達をしてくれたり、ヤクルトの配達の人が毎日安否確認の役割を担ってくれたりということがあります。一方で地域のボランティアの方といっしょにお手伝いをすることで社会参加をしたり、そういった様々なことができるよう考えます。
相談者が少しでも快適に生活できるように、プランを作って、繋げる。そういう役割をしています。
ミト:ケアマネさんだと、福祉サービスを使うためのサポートをしてくれるだけっていう印象ですが、野川さんのお仕事はもっと広範囲で、まちの皆さんにも協力してもらえることを探っていくっていう感じなんですね。
野川さん:そうですね。公的なサービスだけで僕たちは生きてるわけじゃないと思うんですね。まち全体を活用できて初めて住みやすいとか、あの場所へ行きやすいとか、働きやすいとかってなるんだろうとは思うんですよね。
ただそれをプランに入れるというのは、なかなか難しいところではあるんですけど、制度やサービスがないと無理ですねって諦めるんじゃなくて「なかったらじゃあ何か作ろっか」っていう感覚で、意識的にやるようにはしてますね。

ミト:例えば具体的なプランとしてはどんな感じのことを提案したり作り上げていくんでしょうか?
野川さん:これは他の地域で聞いた話にはなるんですけど、マクドナルドに協力してもらって、障害をお持ちの子供さんを抱えるママさんたちが集えるサークルみたいなのを、毎週店舗の2階スペースの一部を開けてご協力いただいているとかですね。
場所の提供だけなんで「どうぞ」みたいな感じかもしれないですけども、それがあるだけでもなかなか話せない悩みを打ち明ける機会になるので、ママさんたちは助かりますし、そこから様々なアイデアや方法が生まれるきっかけ作りになったりもします。
ミト:なるほど、結構アイデアマンの側面があるというか、クリエイティブな仕事なんですね。
野川さん:そうですね。こういったことがまち全体で増えて、協力しあうカタチが増えることで、より良いまち作りにも貢献できたらいいなとは思ってるんですけどね。
でもそんな「相談支援専門員」、実は枚方市が全国で一番少ない地域になるんですよ。
ミト:そうなんですか!?

野川さん:少ないと何が困るかっていうと、
例えば僕は日本酒が好きなんですけど、専門店とかに行ったらお店の方が銘柄をおすすめしてくれたり、一杯試してみて合わなかったらまた違う銘柄に行くってできるじゃないですか。でもそれが福祉サービスってなると「相性の合わない人と当たった…」ってなっても、他の方に換えられないから「もうええわ」って思われる人が出てくるんですよね。
この人口がそこそこ多い枚方市でそういうことになってしまうっていうのはいけないなと。
なので僕は地域で相談支援専門員の方を育成していく役割「主任相談支援専門員」というのもしているんです。育成の際は、誰でもいいからやったらええよっていうわけじゃなくて、きちっと大事なことを分かってくれて、どういう風なサポートをしていかないといけないのかな、というのを考えられる人を育てることを大切にしています。特に「元気な相談支援専門員」を増やしていきたいっていうのが、今の僕の目標であり夢ですね。
独立のきっかけ

ミト: 相談支援専門員はいつからされているんですか?
野川さん:15年くらいですね。元々枚方市内の社会福祉法人で30年以上働いていたんですけど、そのキャリアの半分は相談支援専門員をしていました。
僕が入った当初は施設による福祉サービスが中心だったんですが、そこからどんどんサービスが地域に向かって広がっていきました。なのでこの30年間というのは「施設の福祉」から「地域の福祉」に移っていく様をずっと体感させていただいた感じでした。
そうやって相談員が必然的に増えなきゃいけない中で、枚方市が全国で一番不足しているという状況は、なんとか自分でケアプランを考えてるけど困ってる人、プランをもう諦めちゃってる人たちのためにも、なんとかしなきゃいけないなと思い、このタイミングで独立しました。
ミト: どんな方が相談に来られるんでしょうか?
野川さん:直接ご連絡をいただく方もいますが、まだまだ枚方市での普及率が低いので、計画相談を使ったことのない方がとても多いんですね。なのでそこは、使ったことのある方からの紹介で繋がらせていただくことが多いですね。
障害を持つ方が、困っていることをなかなか口にして言う機会がなかったりします。その言えないをちょっとでも言葉にすることで、実現できることも色々とあると思うので、気軽に相談してもらいたいですね。

相談支援専門員にスポットライトを当てる「S-1グランプリ」の開催

ミト: 様々な課題を抱えているとは思いますが、これから力を入れたいことなどがありましたら教えてください。
野川さん: この業界ってやっぱりものすごい人材難なんですよね。専門員を育成できる「主任相談支援専門員」は、実は枚方ではまだ7人しかいないですし、全国的にもこの相談支援専門員っていうのは少ないんですよね。
なので、このお仕事をしている人にしっかりスポットライトを当てたいなと思って「S-1グランプリ」っていうイベントをやりたいなと思ってるんです。
枚方市内の相談支援専門員が、自分たちが関わることでこんな風に変わりましたよとか、こんなケアプランで相談者の人生がすごく前向きに動き出したよとかっていう好事例を発表してもらうことで、ロールモデルを集めていくんです。
これは従事者だけでなく、これから続く人たちに対しても「そんなことができるんだったら自分もやってみたい」って思ってもらえるような企画にならないかなと思ってるんですね。

ミト: 好事例の共有は大事ですし、日頃の頑張りを讃えてもらえるとやっぱり嬉しいと思うので、それはぜひ実現してもらいたいですね! その先にはどんなビジョンを思い浮かべていらっしゃいますか?
野川さん: 「元気な相談員100人計画」というビジョンですね。もしそれだけの仲間が集まれば、もう何でもできるんじゃないかと思うんです。そうすればこの業界の常識も覆すくらい変えていける可能性が持てるんじゃないかと、そう考えています。
後日、「S-1グランプリ」の開催が決定しました!
2026年2月7日(土)18時~
枚方市総合文化芸術センター1階 創作活動室にて実施されます!
障害のある方と走ったホノルルでのフルマラソン

ミト: 今までのお仕事の中で最大のチャレンジ、もしくは困難はありましたでしょうか?
野川さん: 2〜3年前にですね、以前勤めていた会社から、障害のある人と一緒にホノルルマラソンにチャレンジしてこいって言われたんですよ。 1年目は10kmだったんですけど、それはなんとか達成して。そしたら翌年は「よし、じゃあ来年はフルマラソンね」って言われたんです(笑)
ミト: えーー!全然距離が違うじゃないですか。
野川さん:でもそれを、僕は面白そうやんって思っちゃったんですよね(笑)
ご本人は全身に障害をお持ちの方で車椅子なので、スタッフが車椅子を押して、交代要員が入れ替わりながら参加しました。最終的には42.195kmを11時間以上かけて帰ってきたんですけど、これは面白かったですね。なんせ僕の初フルマラソンがホノルルで、しかも車椅子を押すっていうね(笑)

ミト: 11時間以上押して走り切ったんですか!?
野川さん:はい。僕らも大変でしたけど、11時間車椅子に乗るご本人もしんどかったと思うんで、めっちゃ頑張ってくださいましたね。11時間なんで、最後の方なんか給水所も撤収されていましたが、ゴール出来たときは感動しましたね。色々と困難がありましたけど、過ぎてしまえば全部面白かったです。
マラソンに出てからはジョギングも趣味で続けていて、これも季節や景色を楽しみながら、良いリフレッシュになっています。ちなみに今度、福岡マラソンに出ることになりました(笑)
ポッドキャストを聞いて、インスピレーションを働かせる

ミト: 野川さんのお仕事は、アイデアが浮かぶためのインスピレーションが結構大事になると思うんですが、何か意識してることはありますでしょうか?
野川さん: 僕はポッドキャストが好きなんです。毎朝の食器洗いと、週末のジョギングのときに2倍速で聴いてインスピレーションを得ています。
ミト: おお。ちなみに何を聞いてらっしゃるんですか?
野川さん: 最近面白いなと思って聞いてるのが『ゆる哲学ラジオ』。ほかにも「ゆる言語学」とか、色んな「ゆる〇〇学ラジオ」があるんですけど、面白いです。
あとは武田鉄矢さんの『今朝の三枚おろし』はずっと聴いてますね。本などを紹介するんですけど、漢字学者の白川静さんの紹介のときは「僕が金八先生で人という字はって言うやつあるでしょ…あれ嘘でした」っていうとこから話が始まって(笑)毎回色んな発見と学びがあります。
ひらっくについての質問

ミト: ひらっくのインキュベートルームに入られたきっかけを教えてください。
野川さん: 堺で独立して同じようなお仕事を始めている方がいるんですけど、その人に相談したら「枚方にもきっとこういう起業を応援してる部署や施設があるはずやから調べてみたら?」って言われて調べたら、ここにインキュベートルームがあるということを知って、申し込みさせてもらいました。
ミト: インキュベートルームに入って良かったことはありますか?
野川さん: 入居する前に「他の方のお部屋がどうなってるかがちょっと知りたいです」って言ったら、ひらっくスタッフの高崎さんが「お向かいの小西さんやったら大丈夫ですよ」って半ば勝手に入って、見せていただきました。
小西さんは「僕、いつでも暇なわけちゃいますからね」と言いながらも快く見せてくれて、助かりました。
他にも、ここまでしてくれるんだって思えるほど、疑問に思ったことは全部教えてもらえたり、マッチング大王みたいに高崎さんがいろんな人と繋げていただけるんで、起業の準備で困ることって大概こういうことでしょうっていうのに合わせて、適切なアドバイスをいただけました。

あとは、ここで交流会やランチ会が開かれてみんなとしゃべるんですけど、みんな面白い人たちばっかりで楽しいです。
僕はこれまで福祉業界の人との付き合いばかりだったので、今はいろんな方から刺激が入ってくるんで面白いなあと。今もまだそれがずっと続いてる感じですね。
こうやってもっといろんな人と話したり関わることで、「あ、だったら簡単やからこれぐらいできるよ」とか、「あ、一緒にやったら面白そうやな」と思ってくれる人が増えていくと思うので、もっと様々なプランを作っていけるんじゃないかなと思いますね。

影響を受けた本

ミト: 最後に、野川さんが仕事をする上で影響を受けた本を教えてください。
野川さん: 20歳ぐらいの時に読んだ、スティーブン・R・コヴィーの『7つの習慣』ですね。日本で翻訳出版されたばっかりぐらいの頃に買ったと思うので、もう30年前。
最初は読んでも習慣の持つ大切さがあまりわからなかったんですが、意味が全然わからないから何回も何回も読んだんですね。
でもそのうち、自分の人生というか生き方についてもすごく影響与えてるなと思うようになりましたね。今では読めば読むほど、奥深さが感じられます。
ミト: なるほど。より良い人としての姿勢について書いてある本ですよね。確かに若い頃に読んでも、その習慣を守って何になるの?ってなって、なかなか本質がわからないかもしれませんね。ボクもあらためて読んでみたいと思います。今日はお時間をいただきありがとうございました。
野川さん: ありがとうございました。

▼「トラマナ相談室」について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
Webページ https://toramana.com/
