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2026.04.06
小西明建築設計事務所 小西明さんにインタビュー
小西明建築設計事務所
小西明さんに
インタビュー
【インキュベートルーム入居者インタビュー】

話し手:小西さん
【プロフィール】
小西明さん(小西明建築設計事務所)
枚方を拠点に、大阪・兵庫・滋賀・奈良・和歌山など幅広いエリアで活動する一級建築士事務所です。クリニック、住宅、オフィス、店舗、法調査、インテリアまで、多様な案件に対応しています。私たちが大切にしているのは、建物をつくる前に、まず「人を理解すること」です。お施主様がどのように暮らしたいのか、どのように働きたいのか、その想いを丁寧にくみ取り、価値を生み出すことを大切考えています。目に見える空間だけでなく、その背景にある想いや目的まで統合し、長く価値を育てていける空間づくりを行っています。

聞き手:アサカワミト
アサカワ ミト(コミュニティマネージャー)
ひらっくコミュニティマネージャー。受付業務をしながら、施設の紹介、シェアオフィス会員などを始めとした利用者さまへのインタビューなど、つながる場と機会を作っている。ランチ会をはじめとした、交流イベントの企画、司会進行なども担当。
インキュベートルームの入居者さまにインタビュー

枚方市立地域活性化支援センター「ひらっく」は、新たな事業の創出に加え、地域産業の振興を図るため、起業相談や売上アップ、資金繰りなど経営に関するさまざまな相談にお応えしています。
さらに、多くの方の知見を活用できるコミュニティ型の創業支援施設として、創業支援のワンストップ相談窓口となり、専門家による経営相談、人材及び組織の育成支援等を行うとともに、利用者同士が交流でき、ビジネス面での相乗効果が期待できる機会を創出しています。またセミナー・講演会の開催や会議室、セミナールームの貸し出しも行っています。
今回は6階にあるインキュベートルームの入居者さまにインタビューをします。
インキュベートルームとは、企業や起業家を支援・育成するために、負担の少ない使用料で貸し出しているオフィスのこと。専任のスタッフが豊富な経験に基づいてビジネスモデルや企業経営のアドバイスを行い、独り立ちを支援しています。オフィスは1年から最長3年まで使用可能です。
そんな6階インキュベートルームの入居者さまから、今回は小西明建築設計事務所の小西明さんにお話をお伺いしました。
設計だけではない「問題解決」する建築

ミト:よろしくお願いします。まずは、自己紹介をお願いします。
小西さん: 小西明設計事務所の小西です。
ミト:小西さんはどのようなお仕事をされているのでしょうか。
小西さん:大雑把に言うとサービス業です。建物の設計、デザイン、パース、インテリア、グラフィックなどですが、最近多いのは「問題解決業務」です。
建築分野では最近、クリニックの設計依頼が増えていますね。中規模なクリニックが多く、基本的には私一人で担当しています。一般的な家も設計しています。
ミト:岡山のお肉屋さんも手掛けられたとお聞きしました。
小西さん: 牛をさばいたお肉をそのまま隣にある店舗のカウンターで販売するという、本格的な施設設計のお仕事でした。
おろしたてのロースを食べさせてもらいましたが、驚くほど甘くて本当に美味しかったですよ。

ミト: 設計の分野ではあると思うのですが、パースとインテリアについても教えてください。
小西さん: パースは、はじめに作る完成のイメージ図のことです。設計とセットで受けます、インテリアは、家具や照明、壁紙などで、例えば美容院などのテナントの内装だけ行うということもあります。
ミト: 写真撮影もご自身でされるそうですね!

小西さん:はい、撮影もしています。もともとパースを作っていたので、アングルや構図を考えるのは得意なほうです。
プロの人に撮影を依頼した時に「プロの人はこう撮るんだな」と見比べて、勉強させてもらっています。
他には、お店のロゴも制作しています。
牧野でリハビリ施設をオープンされた、株式会社LIRHaの松宮さんは、建物のリノベーションとロゴも携わらせて頂きました。

▼株式会社LIRHaの松宮さんのインタビュー記事
https://www.hirakata-kassei.jp/blog/2025/12/90090/
ミト: ひらっくのコワーキングスペース利用者の松宮さんですね。
先ほど出た「問題解決業務」についても携わられたと伺っています。
小西さん: 松宮さんのときは、介護保険の条件をクリアするために、市役所や消防署へ一緒に行って手続きを行いました。
法的なハードルが高い案件でしたが、お客様が不安にならないように必要があれば市役所へも一緒に行くようにしています。
ミト: 仕事の幅が広いですよね。なぜそうなったのでしょうか?
小西さん:必要とされることなら全部やっているからだと思います。
今となっては幅広くやっていますが、最初は住宅設計だけでした。そのうち公社の団地や、賃貸などもやっていくうちに自然と幅広くなりました。
建築の道を選んだ理由は「確率」
ミト:それではそもそも、小西さんが建築のお仕事を始められたきっかけを教えてください。
小西さん:実は、なんとなくなんです(笑)。昔から、形を作るのは好きでした。学校の時にみんなが挑戦できるコンペがあって、そこで入選したんです。
ミト: 入選して「いけるな」と思ったんですか?
小西さん: いや、そこまで自信があったわけではありませんが、全然ダメだったら違う方向に行くしかないかなと思いました。できることの確率に差があるのであれば、あんまり突き進みすぎてはいけないかなと思って。
ミト: 「確率」ですか。
小西さん: 学生の時に冷めて見ていた部分があります。入選したことで「少しは確率が高いのかな、じゃあ一回この道で仕事してみようか」と。
建築の世界で学んだ下積み時代

小西さん:下積み時代は大変でした。朝から夜遅くまで、ずっと仕事に向き合う日々でした。
会社に勤めてライセンスを持ってコンスタントに稼ぐ建築系の世界と、安藤忠雄さんみたいにアート作品を作るかのように建築する「アトリエ系」の世界。
一口で建築業界といっても、そういったデザイン系もあれば、ハウスメーカー的なところや法律に強い系、申請許可がいる特殊な建物に強いところ、コンサル的なところなど、さまざまな種類があります。
ミト:小西さんは、何系に入られたんですか?
小西さん:最初は住宅のアトリエ系でした。アトリエ系は朝から夜遅くまで、ずっと仕事に向き合う日々でした。…。でも、作っているものは細部までこだわったもので、どちらかというと富裕層向けだったんです。
ミト:そうなんですね。そういう時代も経験されていたのですね。
自分の好きなデザインというより「プロジェクトの成功」を重視

ミト:小西さんが独立されたのはいつですか?
小西さん: 7年前の29歳の時です。そろそろ試してみようかと思いました。
ミト: うまくいく自信はあったのでしょうか?
小西:自信があったかと言われると、全然ないですよ(笑)。僕は石橋を叩きまくるタイプなのでもちろん悩みますし、しんどい時は夜道を歩いたりしていました。
ミト:へぇー!意外です。
小西さん:でも、独立する人が周りに多かったですし、自然の流れでその道に向かいました。
ミト: なるほど。では、小西さんの強みは何でしょうか。
小西さん: 臨機応変に設計するというところでしょうか。最近は、仕事が「プロジェクト重視」に変わってきています。事業としてどう組み立てるのが理想的かという判断基準で設計してますね。

ミト:相手に合わせてデザインするイメージですね。
小西さん:そうです。だからといって、自分を押し殺しているわけでもありません。
ミト:安藤忠雄さんとかなら、もう、あなたのクリエイティブにお任せします!ですけどね。
小西さん:建築の世界で自分を出すか出さないか……まだわかりませんが、自分は任せろというタイプではないかもしれないですね。さっきのお肉屋さんのように斬新性を求められることもありますが、まずは依頼者の方や、関わる方のお話をしっかり聞くほうです。
修行時代と比べると建築費が1.4倍ぐらい上がっています。高価な材料を使いまくれる時代じゃないので、例えば、照明の当て方だけで雰囲気を良く見せるなど、質を保ちつつコストを調整しながら建築できるよう工夫しています。そういったことを考えるのも楽しいですね。
ミト:小西さんの建築だね、と言われることはありますか?
小西さん:いや、ないですね。お客様の条件や要望に合わせて、毎回更新していく設計です。それが形になり、お客様に納得して喜んでもらえるのがうれしいです。
ミト:要望に応えていけるノウハウがあることが小西さんの強みですね。

ミト: 今後はどんなことをやりたいですか?
小西さん: 事業系はいろいろできると面白いですね。これからもやっていきたいです。「ひらっく」にはさまざまな事業者さんがいるので、その職種のコアな部分に触れることができて、必然的に、業界のリサーチをすることになります。
ミト: 具体的にはどうやって仕事を進めていくのですか?
小西さん: 世間話の中で、どうやって仕事を取っているのか、一人あたりどのくらいコストがかかるのかといった話もしますし、事業計画を見せてもらって、総予算のうち、工事にはこれくらい、設計にはこれくらいという配分まで一緒に考えています。

ミト: そこまで踏み込んでくれるのは、経営者としては心強いですね。
小西さん: やっぱり中身を理解していくと、「この設計はこうじゃないよね」という話ができます。
ミト:お金の計画まで見せてもらうのですね。 経営的な視点です。
小西さん: はい。何にどれだけお金かかるかが大切で、そのうちの工事や設計、その後に何が必要か出していきます。
テナント工事の場合、デザインだけではなく、動線を削るように計画すると床面積に対しての利用率が上がり収益性も上がります。
ミト:そういう仕事が増えて、得意な業界が増えていくのはかなりの強みになりそうですよね。
小西さん:そうして設計して得た結果を、また次の違うケースに活かせます。限られた予算の中でも利益を出せるようブラッシュアップしていくのが楽しいです。
TTY(徹底的にやれ)とマインドパターンの更新

ミト:今までで大変だったことはありますか?
小西さん: いつも大変です!だからメンタリティは「TTY(徹底的にやれ)」方式。一人なので自分がやるしかありませんよね。
ミト: ワークライフバランス的には大丈夫ですか?
小西さん: ひらっくのインキュベートルームは申請すれば23時まで延長できるので、以前はそれくらいまで残ることもありましたが、最近は営業時間とともに21時までには帰るようにしています。
独立したばかりのコロナ禍の時は、本当に仕事がなくて淀川をロードバイクで走ってました。でも今は、仕事がある分、ずっと働いています。
ミト: オフの時間というか、リフレッシュはどうされているのですか?
小西さん: 他の職種の方と話すのは、結構面白いですね。切り口が増えるので。

ミト: 切り口が増える、というのは具体的にどういうことでしょうか。
小西さん:違う業種のコアな部分……どうやって利益を出しているのか、どこに苦労しているのかという話を聞くと、自分の中でも選択肢が増えてくるんです。
「今までこの切り口しか知らなかったけど、実はこっちのルートから攻めるのが本当はいいんじゃないか」とか。そういう発見があるのは結構楽しいですよ。
ミト:それはすごい強みですよね。設計に他業種の知見を活かせるというか。
小西さん: 以前マインドパターンっていうのを聞いたことがあるんです。人間のやることって結局一緒っていうか、行動する自分のやり方(パターン)があるじゃないですか。大きく見た時に、同じことばかりを人は繰り返している。
ミト: 確かに、無意識に同じ選択をしてしまいがちですね。

小西さん:だからそこに、選択肢「C」を入れてみる。そしてまた失敗するか成功するか試して、失敗したら次は「D」に行く。選択肢を増やすことで、パターンにはまらないようにしていく。
そういうのは、やっていて面白いですね。
こうすると「失敗した」とか、ああしたら「成功した」とか。
ミト: 小西さんは失敗をあまり恐れない方ですか?
小西さん: 失敗したら普通に落ち込みますよ(笑)。でも、「あぁ、失敗したな」「今回の作戦は甘かったな」とか。「いや、このやり方ならそりゃ失敗するよね」って冷静に考えている自分もいます。
「ひらっく」から広がる地域との繋がり

ミト: インキュベートルーム(ひらっく)に入居した決め手はなんですか?
小西さん: 独立後に事務所が欲しくて、最初は賃貸を探していました。そんな時に見つけたのがひらっくのインキュベートルームです。家が近いし、空調完備で事業相談できる場所もある。最高な環境です。
入居プレゼンでは「ここに建築設計事務所が1つ入っていることで、他の入居者さんとも上手く連動できるんじゃないか」と話しました。実際、ここに入ってからいろんなことをやっているので、仕事の幅は広がりましたね。
ミト:これからもお一人でずっとやっていかれるんですか?
小西さん:1,2人いてくれるとだいぶ助かります。
ミト: パートナーみたいな感じですか?
小西: そうです。
ミト: 最後におすすめの本などはありますか?
小西さん: 本ではありませんが……、福井県の恐竜博物館の掲示板に書いてあった「標本」の展示物について話してもいいですか?
ミト: 標本?
小西: はい。その展示物には、とある場所で恐竜の足の化石が見つかって、別の場所で腕の化石が見つかって……最初はバラバラに見つかったから、関係者みんなが6つの別の生物だと思っていたんです。
でも何十年か経って、6つのバラバラの骨が、実は1つの恐竜だったということがわかった、と書かれていました。
ミト: 面白いですね!
小西: これは仕事にも通じるなと思っていて、各部署の人がそれぞれ「真実」を言っていても、全体像が見えていないから繋がらない。
そこを関わることで、それぞれの話を全て繋ぎ合わせて、「実はこういうことですよね」と全体像を示すことで問題が解決する。視野を広げて物事を見る、というのが大事だなと思っています。
ミト: バラバラだったものが、小西さんの手によって1つの大きな形になるんですね。
小西さん: そうやって全体を見ることで、プロジェクトが良い方向へ向かっていくための「鍵」になればいいかなと思っています。
ミト:素敵なお話、ありがとうございました!

文:大澤リサ
