ブログ

2026.07.20

cafe hitotoki大橋綾香さん・笠松沙希さんにインタビュー

hitotoki
大橋さん・笠松さんに
インタビュー


【起業街道 枚方塾受講生インタビュー】

◯hitotoki-189

話し手
大橋綾香さん・笠松沙希さん(hitotoki)

祖父母の代から続く自動車修理工場の一角を改装し2017年にオープンしたカフェ「hitotoki」“日常のそばにある豊かなひととき”をコンセプトに、食を通して、暮らしにそっと寄り添う時間を届けてきました。コロナ禍では近隣の個人店を集め商業施設枚方T-サイトで開催する「POTLUCK MARCHE(ポットラックマルシェ)」の主催にも挑戦。2024年より姉妹で新体制となり、ジェラートスタンドのオープンなど新たな一歩もスタートしました。「豊かさとは、自分の価値観を取り戻し、選べる人生を生きること」という思いのもと、飲食を超えて“場所としてのhitotoki”へ挑戦を続けています。

枚方には、「この地域をもっと良くしたい」という思いを持って活動されている素敵な方が本当にたくさんいると感じています。それぞれが得意なことを活かしながら動いていて、枚方塾を通して、業種や立場の垣根を越えてつながることで、新しい可能性が広がることも知りました。各地で生まれている“いい活動”が、点のままで終わるのではなく、少しずつ線となり、やがて面になっていくような、そんな枚方になっていったらうれしいです。私たちもその一つの点として、枚方のために尽力していきたいと思っています。

◯hitotoki-171

経営指導員
高崎健太(地域活性化支援センター管理部管理課ひらっく)

某金融機関で13年間勤務後、北大阪商工会議所に入所。創業・経営相談を通してビジネスモデルや資金調達、マーケティング戦略、事業計画書の助言を行う傍ら、ひらっくのコミュニティマネージャーとしてイベントや企画運営に携わり、インキュベートルームの担当も行っている。

◯hitotoki-84

聞き手
村西朱夏

ひらっくスタッフ。受付業務をしながら、施設の紹介、シェアオフィス会員を始めとした利用者さまへのインタビューなど、つながる場と機会を作っている。オシゴトークをはじめとした、交流イベントの企画や月刊ひらっく新聞なども担当。

書き手
大澤リサ(さわ/フリーランスライター)

企業の取材・インタビュー記事を軸に、採用・広報コンテンツなどを執筆している。強みは、聞き手として相手の言葉を引き出し、話すだけで広報・採用に使える文章へ落とし込むこと。自身もひらっくを利用し、経営相談などを通じてサポートを受けている。

若手起業家支援事業「起業街道 枚方塾」受講生にインタビュー

枚方市立地域活性化支援センター「ひらっく」では、新たな事業の創出や地域産業の振興を目的に、起業相談や経営相談、売上アップ、資金繰りなど、事業に関するさまざまな相談に応じています。

その取り組みの一つが、若手起業家支援事業「起業街道 枚方塾」です。枚方市内に在住・在学・在職している方、または枚方市内で事業を実施予定・実施中の若手起業家を対象に、事業計画のアドバイスや専門家による伴走支援を行い、創業や新規事業への挑戦を後押ししています。

「起業街道 枚方塾」とは

枚方市でさらなる飛躍を目指す若手起業家のための、実践的な伴走型支援プログラムです。「既存事業をブラッシュアップしたい」「新規事業を立ち上げたい」と考える経営者や起業予定者を対象に、約9ヶ月間(全6回の研修)にわたって専門家が手厚くサポートします。また、各受講者に専属のメンターが付き添い、地域経済への貢献と活性化を目指し、伴走支援を行います。

「起業街道 枚方塾」名前の由来

近世初めに京街道として整備され、東海道品川宿から数えて56番目の宿場町として賑わった枚方宿。この地に受け継がれる商いの芽を育て、起業の道を開くプログラムとして「起業街道 枚方塾」としました。

詳しくはこちら https://www.hirakata-kassei.jp/sogyo_youth/

そんな「起業街道 枚方塾」の受講生から、今回は、hitotokiさんにお話を伺いました。

守りたい場所から未来を描く場所へ

枚方でカフェ「hitotoki」を営む大橋綾香さん。2024年からは妹の笠松沙希さんも加わり、姉妹で事業に携わっています。

叔父が営む自動車修理工場の閉業、大きな建物を維持していく不安、そして姉妹で一緒に事業を進める難しさ。そうした課題を抱えていた時に出会ったのが、若手起業家を対象にした「起業街道 枚方塾」でした。

本記事では、hitotokiの大橋綾香さん、笠松沙希さんに、事業を始めたきっかけや、枚方塾を受講して感じたこと、これからの展望についてお話を伺いました。

「廃業の危機」から始まった姉妹のhitotoki

村西:本日はよろしくお願いします。まずは、お二人の自己紹介からお願いします。

大橋さん:hitotoki店主の大橋綾香です。高校生の頃からカフェをしたいという思いがあり、短大で栄養士の資格を取って、その後、専門学校で調理師の資格を取りました。起業前は、パティスリーでの販売や病院での栄養士、社員食堂での調理などを経験しました。

村西:hitotokiを開業されたきっかけは何だったんですか?

大橋さん:叔父が枚方で営んでいた自動車修理工場の後継者問題がきっかけです。創業70年をこえる工場で、「ここで何かしないか」と声をかけてもらい、そのタイミングで枚方に戻ってきました。そして2017年にhitotokiを開業し、今は主に調理を担当しています。

村西:ありがとうございます。では、笠松さんも自己紹介をお願いします。

笠松さん:妹の笠松沙希です。学生時代は心理学を専攻していて、その後は新卒で信用金庫に勤めました。14年間勤めた後、2024年2月にhitotokiに入りました。

村西:今はどのようなお仕事をされているんでしょうか?

笠松さん:今は経理やSNS、イベント出店を中心に担当しています。ジェラートショップの店長のようなこともしています。

村西:起業街道 枚方塾を受講されたきっかけは何だったのでしょうか。

大橋さん:きっかけは、合同会社PicnicWork(ピクニックワーク)の交久瀬さんが紹介してくださったことです。開業する時にひらっくで補助金の相談していた頃、交久瀬さんが「こういうのがあるからどうですか」と言ってくださったんです。

村西:それで、参加を決められたんですか?

大橋さん:すぐに受けたい!と思いました。ただ、忙しいし、コンスタントに講義を受ける時間が取れるか不安もありました。経営はもともと苦手な分野でしたので。

笠松さん:経営について向き合わないと。という思いはありましたが、参加したのは交久瀬さんが薦めてくださったから、というのが大きかったです。違う人に言われていたら、姉は多分行っていなかったと思います。私たちは交久瀬さんに絶大なる信頼を置いていますので。

大橋さん:私たちのために必要だと思って言ってくださっていると感じたので、素直に「今の私たちに必要なんだ」と思えたんです。

村西:その時のhitotokiは、どんな状況だったんですか。

笠松さん:当時は、ほんまに危機的状況で、入ると決めた時には姉から「泥舟だけど本当にいいの?」と言われました。でも、叔父の工場が閉業することになり、あれだけの広さを姉一人で持ち続けるのは難しい。私が仕事を辞めて戻ることで何か変わるなら、一緒にやってみたいと伝えました。小さい頃から育ってきた場所でもあるので、あの場所自体がなくなってしまうのも嫌だったんです。

ちょうどその頃、目の前にライフさんやコーナンさんがオープンすることも決まっていて、それを迎えずに終わるのはもったいないなという気持ちもありました。

でも、実際に入ってみたら、カフェのことも経営のこともわからなくて。信用金庫出身なので姉には経営面でのサポートを期待されていたと思うんですが、「何もできへんやん」と落ち込む日々でした。当時は何もできない私に対してただただ姉にプレッシャーがかかっていたと思います。

同じものを見ていても見えている世界が違う

村西:起業街道 枚方塾には、どんなことを期待していましたか?

大橋さん:経営について学ばせていただければと思いました。無償なのもありがたかったですね。お金がかかって、時間も拘束されるとなったら、参加は難しかったと思います。

笠松さん:私は姉と一緒に学べば同じ軸で話ができるかなという期待が一番大きかったです。というのも、姉妹で性格や歩んできた道が全然違うので、共通の認識や一体感を持ちづらいと感じていたからです。

村西:9ヶ月を通して、その期待は叶いましたか?

笠松さん:思っていた以上に叶いました。参加する時に、何か新事業はふるさと納税とか冷凍食品とかでいいかなという安易な気持ちもありました。でも、入ってみたら、小野先生や事務局の方から、私たちに対して「上手くいってほしい」という強い思いを感じました。そうなると、ちゃんと向き合わないとあかんな。と自然と意識が変わりました。

大橋さん:起業街道 枚方塾には、テーマとして新事業を考えるだけではなくて、参加者4組の相乗効果が生まれてほしいという思いがあったのかなと思います。それが今、まんまとそうなっていると思いますね。高崎さんのドヤ顔が浮かびます(笑)。それも含めて、毎回すごく楽しく学べました。

村西:印象に残っている回はありますか。

笠松さん:講義ではありませんが、短時間で読みたい本を読むことができるABD読書会(Active Book Dialogue)が心に残っています。授業じゃないのに、ほとんどの参加者が集まったんですよ。

村西:強制ではないのに、全員が集合したんですね。

笠松さん:はい、そこが本当に印象的でした。読書会では、USJのマーケティングの本を読んで、まとめて発表しました。そこで「共通言語」という話が出てきたんです。人が認識している世界はそれぞれ違うという話があって、本当にそうだなと感じました。

大橋さん:それまでは「なんで?」と思うことが多かったんです。姉妹だからこそ、同じ親から生まれて、同じように育ってきている。趣味も好きなものも一緒で、目標も一緒。でも見方が違う。信用して、信頼して、任せているけど、進み方が違う。そこで急に不安になったこともありました。枚方塾で学んでから、「違う」ということが、面白いと思えるようになりましたね。私たちはどちらも足りていないんです。一人で円を描けないけど、二人いることで違う方から埋められるのかなと思えてきています。

言葉と数字にすると事業の輪郭が見えてきた

村西:研修の中で大きな学びや、行って良かったと思われたことはありましたか?

大橋さん:梅田にあるコワーキングスペース「Blooming Camp」での中間発表の経験は、かなり大きかったと思います。有識者の方々からフィードバックをいただける貴重な機会でした。そこで交流したり、名刺交換をしたり、次につながる活動を得られたりしました。シェアキッチンを運営されている方ともそこでお話しさせていただいてそこからすぐに出店にもつながりました。

笠松さん:私もすごく刺激的でした。視座が高い方とお話しする中で、ポンと出るワードが億単位の話だったりするんですよ。衝撃的でしたね。

大橋さん:自分たちは、どうしたらうまくいくんだろう、モデルケースはどこにあるんだろう、誰に聞いたらいいんだろう、とずっと正解を探していました。でも、弁理士さん、弁護士さん、女性起業家として事業されてる方など、事業がわかる人がこんなに周りにいるなら、「ここで聞いたらいいやん!」となったんです。また、結局は自分たち次第なんだなということもわかりました。

村西:講義や宿題の中で、大変だったことはありますか。

笠松さん:資料をまとめるのが大変でした。大体のたたき台を私が作って、姉に見てもらいました。そこをすり合わせてまとめるんですが、それがいつもギリギリになっていました。

大橋さん:今までは、「それちょっと違う」ことをお互いに飲み込んでいた部分もあったと思います。でも、そこをすり合わせなければならなくなったので、言葉一つのチョイスもかなり細かく話しました。なんでこの言葉に引っかかるのか。どの言葉なら二人が気持ちいいのか。そういう細かいニュアンスを大事に調整しました。

笠松さん:課題自体は大変でした。でも本当に基礎的なことなんですよ。知っている人は当然やっていることかもしれないけど、自分たちはそこさえやっていなかったので。

高崎さん:一部でいうと、KGI、KPIや、分析の課題などを出して、それを事業に当てはめるものでしょうか。実は、第2期までは宿題形式にはしていなかったんです。

第1回で学んだことをブラッシュアップする上で、宿題が必要だと思いました。第2回の頭にその話をすることで、みんなとの共有も図れるし、参加された4組の中で何かが生まれてくる可能性もあると思っていました。hitotokiさんは実店舗をされていて忙しいので、課題を出すことで前向きになってほしいという思いもありました。ギリギリでも、毎回クオリティの高いものを提出していただいていたので、良かったと思っています。

大橋さん:起業塾がなかったら、一番苦手な目標数値の部分を決めきれないまま進んでいたと思います。目標数値を見える化できて良かったです。

普通には出会えない方との貴重なつながり

村西:同期の方々との関係はいかがでしたか。

笠松さん:すごく仲良くさせてもらっています!普通には出会えない方たちと「同期」としてご縁をいただけることは、すごく貴重だと思っています。

大橋さん:みんな、根っこの部分が似ているんです。全然違う事業をしているのに、「あれ、みんな同じこと言ってる」と思うことは多々ありました。規模が違っても、見ている部分とか、届けたい先とか、大事にしたい思いの部分が近い。ビジネスビジネスしていないんです。

笠松さん:打ち上げをしたり、お互いの近況を聞いたり、お店にも来てくださったり、マルシェにも顔を出してくださったりしています。お互い応援している雰囲気があると思います。

村西:枚方塾の事務局を担当された、高崎さんはどんな印象でしたか?

笠松さん:高崎さんは、最初は正直、ちょっとチャラいと思いました(笑)。第一印象は、ほんまに軽い感じで。

大橋さん:でも、その軽さはいい意味で変わらないんです。みんなのことをつなげたいと思ってくださったり、宿題に対して「大丈夫ですか」と声をかけてくださったり、わからないことがあったら言ってくださいねという聞きやすい雰囲気を作ってくださいました。

講義の後に、めちゃくちゃ真剣な話をして終わろうとしているのに、急にボケ出すみたいなところもあって(笑)。でもそれが、ガチガチになりすぎない雰囲気につながっていたと思います。

笠松さん:フィードバックも、終わってからではなく、要所要所で「この進め方はどう思いますか」「回数はこれで本当に良かったと思いますか」と聞いてくださっていました。

早いレスポンスができるように働きかけてくださって、「あ、真面目やったんや」と思いました。

大橋さん:小野先生もすごく良かったです。頭の賢さは尋常じゃないと思うんですけど、私たちに対してもリスペクトしてくださっているのが伝わりました。ビジネス視点だけでなく、料理をしていることに対しても、体を動かして何かを作ることの大事さもわかってくださいました。寄り添ってもらえていると感じて、心も開きやすかったです。

笠松さん:最初の回で、小野先生が信用金庫のメンターさんに質問を投げかけていらっしゃった姿が印象的でした。「事業者さんたちは十分頑張っているんです。では、あなたたちはどうアシストするんですか?そこの責任を持ってくださいね」という感じで、参加者の気持ちを代弁してくださったんです。

村西:先生がそう言ってくださるのはありがたいですね。受講前と受講後で、事業に変化がありましたか。

笠松さん:やっていること自体は、2年前と比べて大きく変わってはいません。でも全体としての役割の整理が進んだと思います。結局は姉が最初に思っていたhitotoki像と変わってはいませんが、思っていたことが整理されることで、言葉にして伝えられるようになりました。スタッフやお客さんに伝えられることにつながっていくんだろうなと思いました。

大橋さん:一つ一つ、自分たちがやっていること、何で今利益を上げているのか、それだけに依存してしまうことがどれだけ怖いことなのか。感覚的にはずっとありました。だから選んできたし、だから続けてこられた。

笠松さん:感性だけでここまで9年、店を守り続けていたことは、自分でも本当にすごいなと思います。枚方塾の一番の課題は思っていることを言葉にしたり、数値にしたり、見える化したりするための作業だったのかなと思います。

大橋さん:自分一人で進んでいる時は、見えなくても良かったかもしれません。でも、誰かに一緒に進んでもらうためには、やっぱり数値が必要なんだなと感じました。ペルソナの意味も、正直あまりわかっていなかったんです。でも、それが何のためにいるかというと、私じゃない誰かが、そのペルソナを示すことでお客さんを連れてきてくれる。そう知った時に、「そういうことやったんや」と納得しました。

目標としていた法人化も視野に

村西:今後の方向性にも変化はありましたか。

笠松さん:個人事業主から脱出したい気持ちは、ずっとうっすらと思っていました。以前は夢のまた夢と思っていた法人化も、最近はほんの少しずつ視野に入ってきました。hitotokiだけなら、今の形が一番効率がいいのかもしれません。でも、あれだけの場所を支えると思うと、法人化を目指さないと続けられる未来はないと考えています。

そもそもあの広さでなければ、私は入ることさえなかったと思います。姉が満足するまでhitotokiをして、それを応援して、満足したなら辞めて終わり。それが誰にも負担のない幸せな形だったかもしれません。でも、小さい頃から育ってきた場所でもあるので、自分自身があの場所を大事にしたいと思ったんです。どういう形で支えられる未来を描くのかまだまだ具体的にはなっていませんが、枚方塾を通して、視野には入ってきた気がします。それは大きな変化だと思います。

大橋さん:妹は法人化しないと成立しないとずっと言っていたんです。でも私はそのプロセスが見えなかった。でも、枚方塾で妹が目標として挙げたことが、私にとっても目標になりました。

高崎さん:今回の4組には僕がお声がけしたのですが、小野先生に良いメンバーを集めてくれてありがとう、と言われたんですよ。個人的にも、この4組だったら今までとはまた違った若手起業家の姿を見られると思いました。小野先生が今回の4組のキーとして考えていたのはhitotokiさんだと思っています。実店舗をされていて、今後どう変化していくかは小野先生も楽しみにされていたと思います。4組がうまく順応して、無事終えられて良かったです。

枚方という街で自分たちの役割を考えたい

村西:枚方市という場所で創業することのメリット・デメリットがあれば教えていただきたいです。

大橋さん:枚方の人は地元愛が強いと思います。私も枚方が地元だから枚方を選んでいるっていうのがありますね。実家もすぐ近くなので、叔父や祖母が作ってきたこの場所を守り続ける意識が自然とあるのだと思います。

笠松さん:私も守るなんて言って入ったけど、いざ入ってみたらどれだけ守られているんだろうと気付かされました。叔父が閉業して辞めてもまだまだ守られていると思います。

大橋さん:今の建物になってから45年以上ですが、街にとってもあの建物は当たり前の景色だけど、なくなったら多分あそこに何があったんやろうって感覚になるかもしれない。だからあの場所があそこにある意味を、私たちが地域でどういう役目を果たせるかを考えながら、やっていきたいと思っています。飲食店の枠から外れた思いの部分を明確にしていきたいです。

枚方は広くて人口が多く、かつ大阪、京都に近くて住みやすい街であることがメリットだと思います。ただ、商売をするという意味では、同じ日にいくつもマルシェが行われているので、お客様が分散されます。また、岸和田のだんじりみたいに遠方からみんな帰ってきて一致団結して枚方市を盛り上げるぞ!というような文化があるわけではないので、集客の面で課題にもなっていると感じています。そのあたりに、どう自分たちが関わっていけるのかと考えていかないといけないと思いますね。

笠松さん:やっぱり自分たちがしっかり土台を作らないと、グラグラのままでは誰にも何もできないと思うので、早くそこに到達したいです。

落ち込んでいた妹に姉が送った一冊の本

村西:卒業後、実際に事業を進める中であの時の教えや言葉が役に立った!と思った瞬間はありますか?

笠松さん:「どこに行くか」というワードが良く出るようになった気がします。それをやる意味とその先の方向性を問うことが増えたと思います。

大橋さん:「hito-雫」の事業も展開したのですが、その時に出会ったのが、グローバル・シチズンシップの本でした。その内容は、hitotokiとhito-雫の根幹になっていると思います。

笠松さん:hitotokiは姉が最初に始めていて、私はその思いにすごく共感していて大事にしています。一方で、hito-雫は自分の活動としても、お絵かき会やアートワーク、コーヒー店とのコラボ展示なども少しずつ始めています。hito-雫は第2の柱事業として考えていたので、そうしたアートワークが今後収益化も含めて先の事業に意味を持たせられたらと思っています。

大橋さん:もともとは、妹がテクスチャーアートに出会ったことがはじまりでした。それはリンゴを描きましょう、みたいなものではなく、抽象画だから自由に何でも描ける。それを子どもや大人たちと一緒にやる。子ども向けというより、子どもも大人も関係なくできるお絵かき会です。私はそれを見ていて、めちゃくちゃいいことをやっているなと思っていました。これにもっと意味が持てたら、すごく強いものになるんじゃないかなと。

笠松さん:私は本当にただ絵を描きたかっただけなんです。でも、仕事をしないといけないから、仕事としてなら描く理由になるな、ぐらいの感覚でした。ただ描くだけじゃおもしろくない。描いた後に、みんながどう思ってこれを描いたのか知りたいし、私の絵をどう感じたのかも知りたい。全然自分と違う話をされることを期待しているんです。それをみんなでシェアして、楽しいよね、というのをやりたかったんです。

大橋さん:そこに対して、もっと意味を持ったらいいんじゃないのとずっと投げていたんですけどね。

笠松さん:その時、姉が一冊の本を手渡してくれたんです。その頃は、自分が何もできないと落ちていた時期で、手渡された意味もわかりませんでした。でも読んでみると、コンフォートゾーン、ラーニングゾーン、パニックゾーンについて書かれていて、その図に釘付けになりました。私は何も見えないし、ずっと自分がパニックゾーンにいると思っていたんです。でも図を見た時に、当たり前のように私はコンフォートゾーンにいて、そこでパニックになっていると言っているだけの人なんだと気づかされました。そこから景色が変わっていきました。

笠松さん:1週間後ぐらいに、姉がなぜこの本を手渡してくれたのかにじんわりと気づいて、泣いてしまったんです。

グローバル・シチズンシップという考え方は、自分を知って、俯瞰して見て、人を知って、共有する。それが自己肯定感につながって、自分らしさを持てるようになる。自分があって、家庭があって、社会があって、世界があって、ずっとつながっていくという考え方でした。あなたのやっていることは世界につながっていることなんだよ、とずっと姉は言ってくれてたんだと思いました。

そこを紐解いて整理した時に、自分がやっているワークに当てはまると思いました。

豊かさって何だろうと考えた時に、私たちは「選べること」をすごく大事にしているんだと腑に落ちたんです。高価なものを選ぶ豊かさもあるけれど、そうではなく、可能性を広げることが豊かさだと定義できました。だからジャンルレスなカフェだし、自由に描いてほしいし、そこに正解はないし、作品ではなく作品を通して感じるもの、その体験にアート性を感じていると理解できたんです。

大橋さん:本当に、ぽたんと一滴を落として、そしてその一滴が必ず広がるイメージは持っていたい。何かをやる時には、自分たちだけでは止まらない。誰かに何かが起こる波紋を意識するようになりました。

個人店の熱い思いに触れるのが心地よい

村西:一番大きなチャレンジはどんなことでしたか?

大橋さん:POTLUCK MARCHE(ポットラックマルシェ)ですね。きっかけは、枚方T-SITEさんで「十人陶色」という陶器作家さんを集めたイベントに出店させてもらったことです。その時に、担当の方から、1階で1週間、朝10時から夜8時まで催事的に出店してほしいと声をかけていただきました。

でも、hitotokiだけ1店舗で出店するのはお店を閉めても無理だと思ったので、最初は断りました。ただ、せっかく声をかけてもらったのに、チャレンジしないことにすごくモヤっとしていました。ただ、チャレンジしたいけど1店舗では厳しい人は他にもいるんじゃないかと思ったんです。じゃあ、十人陶色のように、個人店が集まれば叶えられるのでは?と提案したらそれが通って、そこから仲間集めが始まりました。それまでは、横のつながりも何もなかったんです。ずっと店にいたし、毎日の営業をこなすだけで必死でした。

大橋さん:私は東京に行っていた時に、百貨店のお惣菜屋さんで販売をしていたことがあって、そこで「ベスト販売員」みたいなものに選ばれたこともあるんです。だから、売ることは結構自信があるんですよね。それも自分たちの強みの一つだと思っています。

今回の催事では、皆さんに商品を作っていただいて、私たちがそれを預かって販売する形にしました。手数料をいただくので、出店者さんにとって利益は大きくないかもしれませんが、商業施設で出店すれば広告宣伝にもつながります。実際、うちのお店だけだと、来てくださるお客様は1日20人、30人くらいです。ケーキをテイクアウトできることも知らない方が多いので、店頭で売れたとしても、10個くらいなんですよね。でも商業施設なら、それが10倍、20倍になる可能性がある。それで皆さんにそのように声をかけていって、なんとか10店舗以上に協力していただくことができたんです。皆さんのおかげで、1回目から枚方T-SITEさんの催事の中でも人気のイベントになって、半年に1回のペースで開催できるようになりました。

笠松さん:私は企画段階から入っていたので、どういう思いでポットラックマルシェが始まって、どういう思いでつなげたいと思っているのかも聞いていました。売り場に立った時に、個人店さんの熱量の強さをひしひしと感じたんです。信用金庫の勤務時代には私だけが熱いといわれ、どこか疎外感を感じていたんですが、出店者さんたちの強い思いや熱を心地よく感じました。

村西:ポットラックマルシェの出店者のみなさんは本当に素敵ですよね。みなさん昔からの知り合いかと思っていました。

大橋さん:出店してくださっているお店は、もともとリスペクトしていたお店ばかりなんです。お客さんとして行っていたけど、「hitotokiをやっています」とは名乗れなくて、1ファンとしてこっそり行っていました。でも、ポットラックマルシェをきっかけにご挨拶をして、思いを伝えて、共感してもらって、任せてもらえる。それはすごく責任のあることだから、本気の姿勢を見せることで何かが変わっていく。それが伝わることを体現できる場所だと思っています。

ポットラックマルシェでは、いろいろな店舗の商品を預かって、一つのレジで会計する形にしています。だからこそ、レジで「これは誰々さんの商品です」「これは12店舗のマルシェです」と伝える声かけを大事にしています。私は枚方の中心である枚方T-SITEという場所でできていることもすごく誇りに思っています。

笠松さん:こんな素敵な店舗があるんやで、次はお店にも行ってな、絶対行ってや、支えてや、という熱量を込めているつもりです。出店者さんもその気持ちを受け取ってくださっていて、自分のお店の商品だけではなく、違う店舗の商品も自然と試食や紹介をしてくださるんです。それは自分たちが拙いからこその頼りない部分ではありますが、感謝しなければいけないなと思います。お客さんも含めて、みんなで作り上げていることに、毎回感動をいただいています。

村西:私もポットラックマルシェが好きでよく行っているんですが、こんな誕生秘話を聞けるのはめちゃくちゃ貴重な機会です。ありがとうございます。

村西:それでは、今後、達成したい目標を教えていただけますか?

笠松さん:事業ベースでいうと、営業している時間以外での利益率をどう上げていくかが課題です。それから、ほぼ活用できていない土地をどう使っていくかも、まだまだ検討していく段階です。今、姉妹の中で思いの一致感を感じるようになったところではあるので、その気持ちに合う人にフォーカスしていくところからですね。それまでに、店舗がしっかり強くなっていくことが一つの目標です。2027年、2028年までの課題が明確になってきました。それを超えたら、どれだけのことが描けるんだろうとワクワクしています。

起業街道 枚方塾は考えをまとめて次に進める場所

村西:最後に、起業街道 枚方塾はどんな方にすすめたいですか。

笠松さん:私たちのようにビジネスの初心者さんにとてもいいと思います。

大橋さん:自分自身を見つめるのにもいいと思います。お題をいただいて、それをこなしていくことで、考えを外に出せる機会になるので。

大橋さん:発表までするとなると、「まとめきる」ことの違いをすごく感じました。ただ考えているだけじゃない。学んでも、結局「次どうするか」がないと意味がないんですよね。でも、枚方塾ではまとめてから次はこうすると言わないといけない。それが後で変わったとしても、一旦は期限の中でまとめきる。それがすごく大事だったんだなと感じました。自分たちの弱いところだったんだなとも認識しました。

笠松さん:枚方を盛り上げたいと思っている人が合っている気がします。行政や商工会議所とのつながりがあるとプラスになる人とか。

大橋さん:商工会議所に来たことがない人にも受けてほしいですね。

笠松さん:私たちもサポートしてくれている人がいることさえ、知りませんでしたし、こういう人たちがいるんだよー、ということがもっと知られたらいいなと思います。

村西:では、これから枚方塾を受けようとする方にアドバイスなどがあればお願いします。

大橋さん:アドバイスというとおこがましいですけど、なんでも自分次第だから、捉え方次第でなんとでもなれるのかなと思います。

笠松さん:枚方という地域の中で事業をさせていただいているので、共に盛り上げられたらうれしいです。一緒に盛り上げていきましょう。

大橋さん:そうですね。どこかで、きっとつながることはあると思います。

笠松さん:枚方塾に参加して本当に良かったと思っています。すごく大きな転機をいただきました。大きな変化の年でもあり、ここが二人のベースになっています。

大橋さん:感謝しています。高崎さんに選んでもらえて、本当に良かったです。

笠松さん:ここを大事に、立ち返る時にも、きっとこの時の資料を見て初心に帰ると思います。今後も二人が目指すべきhitotokiを、どのように表現していくのかを忘れずにいたいです。

編集後記

枚方塾での学びを通して、お二人はそれぞれの見えている世界の違いに気づき、思いや感覚を言葉にし、数字にし、事業として伝えられる形へ。守りたいという思いだけでは続けられないからこそ、向き合い、話し合い、形にしていく。姉妹で経営していくからこそ向き合い続ける必要があった。その過程がとても印象的でした。

hitotokiさんが、これから枚方の中でどんな場所になっていくのか。お二人のこれからのご活躍を楽しみにしています。

公式サイト:http://hitotoki-none.com/

Instagram:https://www.instagram.com/hitotoki_cafedining/

枚方市立地域活性化支援センター

〒573-1159
大阪府枚方市車塚1丁目1番1号
輝きプラザきらら6階(管理事務室)

050-7105-8080

FAX:072-851-5384

開館時間 月曜日~土曜日 9:00~21:00
日曜日・祝日 9:00~17:00
貸室
受付時間
月曜日~土曜日 9:00~20:30
日曜日・祝日 9:00~16:30
経営相談
受付時間
月曜日~金曜日 9:00~17:30
この時間帯が難しい場合は、ご相談ください。

休館日:年末年始(12/29~1/3)